香水瓶の底

細かいことは気にしない、香水ブログ

イストワール ドゥ パルファン 1969 Histoires de Parfums - 1969

 

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これは確か5月のサブスクリプションで選んだ物。

 

「嗅覚で読む本」「嗅覚の図書館」

御伽噺、著名人、歴史に音楽…様々なストーリーを香りで表現する。

そんなコンセプトのフレグランスハウス、

Histoires de Parfums(イストワール ドゥ パルファン)には前々から興味があり、

その中でも自分の一番気になるテーマ&一番好きそうなノートの1969を5月の一本に迷わず選びました。

(大嘘。アムアージュライラックラブと迷いに迷ってツイッターでフォロワーさんに投票して選んでもらった)

 

 

 

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Histoires de Parfums - 1969

リリース:2001年

調香師:Gerald Ghislain

 

トップ:ピーチ

ミドル:ローズ 、ホワイトフラワー、カルダモン、クローブ

ベース:ムスク、パチョリ、チョコレート、コーヒー

(オフィシャルサイトより)

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ウッドストック。ヒッピー。ボヘミアン。ロック。ウイスキー。革命。ラブアンドピース。

そんな60年代カルチャーを"an erotic year"と表現するGerald Ghislain。

ホワイトムスクとダークチョコレートで創り上げた彼なりの60年代が、"1969"というわけだ。

 

この1969, イストワール ドゥ パルファンのベストセラーの一つらしいのだが、かなりユニーク。

 

トップ。

清涼感のあるスパイス…とピーチ。

クローブとカルダモンのはっきりとしたスパイシーさの後ろに

フルーティなピーチがいる。

後ろではなく、並んでいるくらいかもしれない…

どちらかに転ぶことなく

スパイスとフルーティが共存している。

 

この時点で既に嗅いだことの無いタイプの香りで驚く。

ピーチフレーバー付き・キシリトールガム?

スパイシーともフルーティとも言いにくい。

正直なところ、「奇妙だな」

というのがファーストインプレッション。

 

味気が無くなってきたピーチガム

代わりに放り込まれるダークなチョコレート

そして一瞬顔を出すローズ

もろともパチョリが飲み込み温かみのある印象に。

ローズ×ショコラ×パチョリ

外れの無い3人組。

この辺りが一番60年代っぽい…かな?

ジェラルド氏の言うエロティシズムを感じる香りかと言うと少し微妙だが,

甘みのないカカオとパチョリがサイケかつ退廃的なイメージを醸し出していると言えなくもない。

 

後は少量のスパイスを引きずりながら、

チョコとムスクが溶け合ううっとりとした香りに。

スイートっぽいコンポジションなのに、甘さはほとんどない。

 

やはりこの香水で曲者なのはトップノートだと思う。何度嗅いでも少々違和感を感じる。

最初は「ピーチのジューシーさが足りていない」

のが違和感の正体かと思ったが、スプレーヤーから直接嗅ぐとピーチのみずみずしさを感じるのだ。問題は肌に乗せて香りが立った後。

今まで自分の嗅いできたフルーティ+スパイスの組み合わせは、スパイスのクセや爽快感がフルーツやベリーの甘さ/果実感を引き立てる、というのがほとんどだった。

が、この1969のトップは真逆。ピーチの甘さをスパイスが牽制し、ピーチがスパイスの刺激をおさえる。

ただそれを「二つの香りが見事に調和している」と取るか「お互いの良いところを打ち消しあっている」と見るかは人によるだろう。残念ながら自分は後者だ。

 

どちらの特徴もフルに前面に出てこないからか、何とも言えない妙な気分になる。感覚としてかなり近いのが、

「ミントガムを噛んだ直後に甘いものを食べた」または

「歯磨きをした直後にチョコレートを食べてしまった」

 この2つだ。スーッとしたのと甘いのが混ざり合って、不快とまでは行かずとも、思っていたのとは違う味になってしまったあの感じ。

 

取り方によってはチョコミントにも歯磨き直後のおやつにもなってしまう面白い香り。ノート構成だけ見て飛び付かずに、是非一度試香してから購入を検討してみてほしいフレグランスだ。

 

あと、この香りで「60年代」「エロティシズム」というのもやっぱりピンと来なかった。

自分は当然60年代を生きてはいないが、カルチャーやミュージックの大ファンであるので、自分なりのではあるがイメージは持っている(それを言ってしまえば同ブランドの1889や1725なんて誰も生まれていない年のだし…こういうのは歴史的に正しいか、よりも造り手のストーリーが組み込まれているか、嗅いだ人のイマジネーションに結びつくか、が大事になってくると思うので…)

ユニークなピーチとスパイスのぶつかり合いの後もパチョリ+チョコからムスクと何ら特別でない香りで終わってしまう。これはその世代をよく知らない自分が高望みしているだけなのかもしれないが、ちょっと物足りない。

 

決して悪い香りではないが、 このブランドや作品のコンセプトもありバックストーリー、パッケージ、香り全てセットで楽しみたい、という気持ちが大きかった私には、ピースがハマりきらなかったんだろうな〜と。ただこの香りがぴったりハマる人もいるはず。

一度肌に乗せて試してみることをオススメします。

 

香水っていろんな楽しみ方があるからやっぱり良い。