香水瓶の底

細かいことは気にしない、香水ブログ

謎海外ブランド「生き霊」の香水を取り寄せてみた~前編~

 

 

タイトルの通りの内容です。

 

この頃なんとなく自分の香水収集熱が冷めてきているのを感じていました。

そこで原点に立ち返り、完全に「世界観」「雰囲気」で気に入るものは無いかと情報を漁っていたところ、目に入ってきたのがこのインディーハウス"Ikiryo"

 

(All photos via. www.dreamhouse-ikiryo.com )

退廃的かつ強烈なゴシック・アートワーク。

緻密に練られたストーリーラインのもと繰り広げられるのは、

これでもかという程のグルマン、ウード、ホワイトフローラル、洋酒、グルマン

重ための甘い香りが好きな人はノートを見ただけで涎が垂れそうなラインナップ。

とてつもなく興味をそそられたのでした。

 

 

そもそもikiryoというのは"Vincent of Dreamhouse"...ヴィンセント氏のソロ・アートプロジェクト"Dreamhouse"の一つで、香水そのものの調香だけでなく、コスチューム、メイク、イラスト、写真、その全てを一人で手掛けているそう(何者?)

本人も自分のワークスタイルを『もしも映画監督のティムバートンが、ヘアメイクも写真編集も衣装も全て担当して、しかし演出もそのまま担当したら......??』と説明しています。

しかも香水Youtube界隈では「香水屋のウィリー・ウォンカ」だなんて二つ名で呼ばれているらしい。インディーながら2016年の初ローンチ時点で既にかなり話題になっていたようで。

 

思い立って、昨年末にサンプルの3つ入ったパックを頼もうとしたら.....

「ごめんね、今はのところサンプルパックはアメリカ国内のみの発送なんだ...」

とヴィンセント氏からPaypalを通じてメッセージが。

とはいえ一本$140する香水を情報ゼロの状態からBlind Buyする気にはなれず、

かと言って諦めもつかず......

 

その翌日、アメリカ在住時代の友人から

「元気~?年末年始帰国するんだけど会わへん?あんた化粧品とか好きだったもんな、なんかSephoraで買ってったるわ!」

との連絡。......何という神がかったタイミング!

このチャンスを逃す手は無いと、事情を話しサンプルパックを受け取ってもらうことに。

 

 

クリスマスシーズンで配送が滞るところ何とか無事に友人宅へ到着。

年明けに大阪で再開し、サンプルたちを受け取りましたとさ。

 

そして届いたのがこちら。

 

 

前置きが長くなりましたが......

香調とアートワークをさっと見て、直感で気になった

 

・Blood Cherry Cordinal

・Candyman

・Ghostdance

 

の3つをチョイス。ラベルが手書き。

いずれも3日ずつ使用したので、その感想です。

 

 

 

Blood Cherry Cordinal

ノート:チェリー、チョコレート、ハニー、コニャック、キャラメル、バニラ、アンバー、ムスク

 

......スプレーしたその瞬間から爆風のように押し寄せる、

チェリー、チェリー、チェリー!

瑞々しい生のサクランボではなくて、グロテスクなまでに真っ赤に染められたシロップ漬けのアメリカンチェリー。

咳どころか心臓の鼓動でさえ止まりそうな咳止めシロップの香り。



 

こればかりは文章より視覚的イメージの方が強く浮かんだのでコラージュを。

とにかく薬のようにシンセティックなチェリーだ。

悪魔の駄菓子屋に売っているキャンディーはきっとこんな香りがする。

ポップで人工的なアメリカンチェリーの香りがイケる人は、ハマる。

逆にそうでない人は一日頭痛が続くだろう。

 

ちなみに、ikiryoのウェブサイトに香水ボトルのイメージ画像が無いのは、全てがハンドメイドでデザインもその時々で微妙に違うから、と予測した。

 

 

Candyman

ノート:タヒチアンバニラ、ベンゾイン、トル―バルサム、マルメロ、カメリア、ココナッツ、マンゴー、アンバー、パチョリ、ココアエクストラクト、タバコ、金木犀

 

マンゴー、ココナッツ、バニラをトップに力強い存在感を示すバルサム(樹脂。)

キャンディマンという名から、もっと砂糖菓子のようなもの想像していたが

実際はかなり重い、樹液のような香り。

メープルシロップとも違う、もっとベタベタした、煮詰まった木の香り。

タバコやパチョリはおそらく香調を整える程度のもので、タバコの葉と思われるものはバルサムに溶け、苦いパチョリも前面には出てこない。

 

この香水のビジュアルはおそらくヴィンセント氏本人ですが、

ヴィンセント氏がファブリックストア(布地を扱う店)へ行くときはバッグに沢山のキャンディを詰めて店員さんに配ることから"Candyman"の愛称で親しまれており、この試作品をつけて店に出向いたときも「ハーイ、キャンディマン!」と迎えられたことからこの名前にしたとか。

 

 

Ghostdance

ノート:ブラックベリー、タバコ、ウード、ウイスキー、トル―バルサム、コスタス、ムスク、砂糖、クマリン、ココア

 

1967年10月6日、サンフランシスコのヒッピームーヴメントの終わりを告げる"Mock Funeral"をトリビュートし、ちょうど50周年の2017年同日にリリースされた香り。

ヒッピームーヴメントでのインスピレーションの一つ、ネイティヴアメリカンの「お金や富にとらわれないSelf-sustainingなコミュニティ」から、その民族衣装と喪服を掛け合わせたヴィジュアルのアートワークになっている。

 

この香りは.....今まで嗅いだことのない「肌を感じるブラックベリー

これもCandymanと同じバルサムが作用しているのだろう、ジトっとした、ダーティな熱がある。

タバコ、ウイスキー、ウードと並ぶとなんとなくドライな印象があったのだが、もの凄く湿度を感じる。ムスクノートも、結構アニマリック寄りなんだと思う。これは面白い。ユニーク。

 

↑ファーストインプレッション。

 

ベリー系はトップで飛んでラストにはほぼ感じなくなる香水がほとんど、という印象だがコレは最後までベリーが居る。しっかりブラックベリーとココア。

しかし自分がこの香りから受けるのはマスキュリンな印象。

ベリーが好きだけれども、ポップでキャッチーな香りはなんとなく自分に合わない...というメンズに是非試してみて欲しい。

 

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3つを全て試してみて、正直フルボトルを買いたいと思うものは無かった。

どれも本当に素晴らしいけれど、ボトルを買うときは「自分が普段使いできるか」をメインに考えているため

本命だったBlood Cherry Cordinalは超キッチュで人のいる所につけていくのは少しはばかられるのと,Candymanはもっとストレートな甘々を想像していたし、Ghostdanceは自分が纏うにはちょっとイメージと違う.....

 

そんな風にぐるぐる考えていたところヴィンセント氏からメールが。

 

ウィンターセールのお知らせ。年明けから、オーダーが一定数に達するまでBuy 1 Get 1 Free(一本買ったらもう一本無料でついてくる)を開催。

また、サンプルパックの発送は普段国外にはしていないけれど、今回限りInternational Orderに選べる3つのサンプルが無料でついてくる。

 

迷う、これは迷う。

Blood Cherry Cordinalとあと一本をブラインドバイしてしまうか...??でも結局使わなかったら意味ないし.....

と思っていたら数日後さらにメールが。(ちなみにIkiryoのメールマガジンは無い。つまり一度購入した人にのみお知らせが送られてくる。インディーズなので小さなコミュニティで回っている印象。)

 

 

詳細は割愛するが、今は販売していない過去のヒット香水が期間限定で復活する、という内容。

サンプルをオーダーするときFragranticaで色々調べていたら、過去作品に気になるものが沢山あった。

完全ブラインドバイになってしまうが「このハウスのこのノートはこんな感じ」という大まかなイメージはサンプルで掴んだため、個人的な好みと照らし合わせ

 

・かなり強く出る印象のトル―バルサムが入っているものは避けてみる

・ここの甘いのは最強説があるのでグルマンで攻める

・サンプルはフローラルノートや他のタイプの香りを選択

 

という条件で見繕い、思い切ってオーダーしてみた。

数量が限られていて早く売り切れそうだったので、レビューもろくに見ずに購入。

発送まで時間かかるけど絶対ちゃんと届けるからね!とメールにあったので一か月以上かかるのを覚悟していたが、1/20に注文して1/28には発送され、2/9には到着した。早い。

 

 

そんなこんなで無事手元に到着。

ボトルにプチプチが巻かれているのと緩衝材が新聞紙だけというかなりの簡易包装に驚いたが、ダメージもなく綺麗な状態で届いて安心。

 

長くなったのでこちらのレビューは次の記事で......