香水瓶の底

細かいことは気にしない、香水ブログ

キリアン ブラックファントム Kilian - Black Phantom

 

自分で撮影した写真がもれなく雑で申し訳ない。

 

香水収集を始めたばかりの時とにかくキリアンに憧れており、今はフルボトルも2本持っているのですが、なんだか文章化するのを勿体ぶって後回しにしていました。

2つともこれからの時期にぴったりで出番が増えるのでこのタイミングで書いておきます。

 

何だかんだキリアン大好きです。

 

 

Kilian - Black Phantom

 

リリース:2017年

調香師:Sidonie Lancessuer

キーノート:ラム、コーヒー、シアニド

(オフィシャルサイトより)

 

『今日がどうであれ、明日は分からない。死を忘れず、今日を生きろ―。』「海賊の水」とも呼ばれるカリブ海に浮かぶマルティニーク島のラムが苦味の強いコーヒーにツイストを加え、アーシーで温かいベチバーの香りがバランスの取れた深みをもたらします。シュガーケインと、クリーミーで芳しいサンダルウッドのダークな余韻は、冒険を成し遂げた勇者のみが手に入れられるご褒美です。

(ラトリエデパルファム公式サイトより)

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ブラックファントム 「メメント・モリ

死を忘れるべからず、の副題がつけられたこの香水

海賊にインスパイアされているようだ。

そう、死と隣り合わせのスリルを生きる者はセクシーで、破滅への誘惑はいつだって甘い。

発売当初、物語上の海賊船を彷彿とさせるでかでかとスカルで飾られた黒い箱で話題になり、今そのパッケージングは無くなってしまったものの、コフレとして別売りされている。(要らないと思いつつも復活に安堵してしまったのは自分だけだろうか)

 

兎にも角にも、重厚な甘さのフレグランスだ

トップから酔わせるような洋酒(ラム)が香る。

湿気の少ない時期に使うといっそうベチバーやパチョリのアーシーな重みが強く出て、

どこかレザーのトレンチコートを纏ったような温かを感じられる気がする。

このトップの重みのせいか、この香水自体にマスキュリンな印象を受ける。

グルマンな香りがもたらすイメージはセクシーな女性だったりプレイフルなガーリーさ=フェミニン に直結するものが多いが、ブラックファントムに関しては二枚目で色気のある男性像が思い浮かぶ。

 

さて、肌につけて間もなく

仄暗い土臭さは深煎りでローストしたコーヒーへ

ラムのアルコールはまとわりつくようなキャラメルへと姿を変えてゆく。

加速する甘さ、これはもう本当に抗い難い。

その価値を確約された財宝。こんなに、見え透いて、甘いのに。もっともっと求めて深追いしてしまうグルマン。

気が付いたら癖になっているだとか、裏に隠れている魅力とか、そんなものではない。

確かにそこにあると解っていて手を伸ばす。どんな危険があるかは分からない、けれど舐めたら確実に天国へ連れて行ってくれる甘さ。確信を持って、そちらに舵を切る。

これを使った時点で、あなたは確信犯なのだ。

 

「コーヒーは

地獄のようなブラックで

死のように強く

愛のように甘いのが良い」

 

ラスト、肌に残るのはバニラより軽やかな、

ヘリオトロープとサンダルウッドのようなクリーミーさ。

ここでキーノートとなっているのが"Cyanide(シアニド)" =シアン化物、だ。

青酸カリを筆頭に知られている青酸化合物。かすかに、アーモンド臭がするというのは有名ではないだろうか。

これはおそらくシアン化物を香料として使用しているわけでなく、それが持つ香りを逆にアーモンド等の香りで再現しているのかと。

Memento Mori. その最後に待ち受ける甘さがシアニドという毒だなんて、よく出来たストーリーなのです。

 

この香りを纏うとき、あなたはきっと他人の尺度で生きていない。

欲しいもの、なりたい姿に忠実で、最高に傲慢。

取り繕い、つまらない日々を送っている者の目には最高に美しく映るだろう。

 

ちょっと派手なスーツ、もしくはリトル・ブラック・ドレスに合わせてみて欲しい。

守りに入ることなく欲しいものを手に入れられるはず

そんな香り。