香水瓶の底

細かいことは気にしない、香水ブログ

トムフォード タバコバニラ Tom Ford - Tobacco Vanille

 

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Wishlist絶賛消化中。

 

こちらは先月のNeiman Marcusセールでの戦利品です。

いやはや、アメリカ百貨店ではコロナ後初の破綻ということでしたね…

色々迷いましたが香水はとりあえず一つだけ。いつか買う、と言いつつも(主にお値段のせいで)二の足を踏んでいたこちらです。

 

 

 

 

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Tom Ford - Tobacco Vanille

リリース:2007年

調香師:Olivier Gillotin

 

トップ:タバコリーフ、スパイス

ミドル:トンカビーン、タバコブロッサム、バニラ、カカオ 

ベース:ドライフルーツ、ウッドノート

(fragrantica.comより)

 

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トム・フォードのPrivate Blend Collectionのオリジナル・ラインナップの一つ、Tobacco Vanille。

タバコ&ウッディにタバコ&フゼア等、タバコノートの香水は数あれど、「タバコ+スイート系フレグランス」人気の火付け役はこのタバコバニラというのが個人的な見解だが、どうだろうか。

 


Opulent. Warm. Iconic. | Tobacco Vanille | PRIVATE BLEND | TOM FORD

 

トムフォードがロンドンの紳士クラブからインスパイアされて創ったというタバコバニラ。

 

タバコフレグランスというとKillianのBack to Blackのようながガツンとしたスモーキーなトップを想像しがちだったので、TFのタバコバニラを初めて買いだ時は意外なほどのまろやかさに拍子抜けした。 

 

トップでツンと突き抜けるスパイス。

明確なノート表記は公表されていないものの、

シナモン、ジンジャー辺りを強く感じる。

 もしくは少しのアニスに、クローブ

ピリッとしたアクセントのある香り。

 そこからすぐに追いかけてくる濃厚なバニラを

スパイスもろともタバコの葉が包み込んで、

何とも刺激的な香りに。

スモーキーな煙草の火というよりは、葉巻やパイプの甘さのある香りのイメージ。

 

葉巻の香りに加え、甘いバニラに絡むトンカやカカオの奥行きが

バーカウンターの芳醇なコニャックやバーボンまでをも彷彿させる。

独り静かに燻らせるタバコというよりは、

ソーシャルな場に漂う煙の印象が強い。

 

 時間が経つほどバニラやドライなウッドが色濃く出てくるが

基本的にはいたってシンプル。

ブレンドされたスパイスにバニラの甘さというコントラストと、

トップからミドルまで一貫して主張するタバコ。

表立って見えるドラマチックな香りの変化は無く、

シングルノートフレグランスに近いものがある。

重ね付けをも考慮されたプライベートブレンドコレクションならでは。

 

両方ともかなり濃厚なのにフレグランスとしてトゥーマッチな印象を与えないのはそれぞれが絶妙なバランスで配分されているから。

つけ始めはスパイシーさとスイートさの戦い、という勢いだが

(このスパイスも決してアグレッシブなものでなく爽快感がある)

ドライダウン後はスパイシー、グルマン、ウッディーが見事に溶け合い

「甘い…いい香り…」としか考えられなくなる、

中々にあぶない魅力のある香水だと思う。

 

割と多くの海外の香水レビュアー(主にアメリカ人)がこの香りをサンクスギビングやクリスマスなどの”ホリデーの香り”と評する。この時期にジンジャーブレッドクッキーなどスパイスをふんだんに使ったお菓子を食べる習慣があるからだろう。

スパイス+スウィートのフレグランスをなんでもかんでもホリデーな香りと言い切ってしまうのはいささか短絡的では?と思ってしまうものの、日本人がサンダルウッドやインセンスノートを嗅ぐと「お寺の香り」に直結してしまうのと同じ原理かと。

イングランド高級紳士の社交の場を思わせる香りも、

アメリカ人からすれば懐かしいクリスマスの香りに映るかもしれない。

何が言いたいかというと、甘さがしっかり出るフレグランスなので"Tobacco"のワードで躊躇しているグルマン香水好きさんには是非試して欲しいという事である。

 

 

また、シンプルといえどその拡散力と持続力はかなり強く、

体温でどんどん甘さが広がっていく。

「意外とシンプルでとっつきやすい香りだな」

と思い気軽に3プッシュ程してみたところ、

夜シャワーを浴びさらに翌日になっても肌に香りが残っていた。

周囲の人間を窒息死させるような重さでは無いにしろ、つけ過ぎに注意。

 

 

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トムフォードのオフィシャルサイトにある、

「男性がつければやり過ぎ、と言っていいほどの酔わせる香り」

というのは最初は理解できなかった。

これこそ個人差があるものの、

自分にとってのマスキュリンさはアニマリックなレザーであったり、またはベチバーなどの重いアーシーな香りだったので

この甘辛い、ほとんど誰にでも受け入れられそうな香りがなぜ男性的なのか?と思ったが今なら少し分かる気がする。

 

この香りから想像するのは

コミュニケーション能力に長けており、

自信家で、相手の懐に飛び込むのを恐れない人間。

葉巻を酒を片手に笑顔でビジネスを説く、野心家。

社交的で敵意を感じさせないものの確実に周囲の注意を惹きつける男性だ。

ちょっと小洒落たスーツを着た細身の男性でも似合うだろうし

逆に体格の良い男性がまとえばこの甘さはかなり危険だ。勿論良い意味で。

 

(基本的にフレグランスの男性向け、女性向けというのはマーケティングの問題でしかなく、好きなものをつければ良いと思う、という自分の考えを前提に)

女性がこの香りを纏った場合は「ミステリアスなセクシーさ」が勝つと思う。

男性的なスモーキーさと蠱惑的なバニラが

その人のフェミニンとマスキュリンの間で揺れる二面性を引き出すかもしれないし、

もしくは甘い甘い香りをまとった可憐な女性が煙草を吸う男性と会ってきたばかり、のような想像を掻き立てるかもしれない。

どちらにせよアンバランスかつ、誘う香り。

 

シンプルだからこそ、つける人の持つ魅力が浮き彫りにされるのだろう。

おそらく自身の魅力に自信が無さ過ぎたり、

あまりに人生経験が浅い人がこれを纏っても

バニラコーラの香りにしかならないのかもしれない、と思う。

 

 

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 何度か使っているうちに、

「コレクションにひとつ入れておきたい香水」から

「コレクションの中に無くてはならない香水」

になってしまった。このフレグランスの中毒性は高い。

10mlのトラベルサイズでなく、

フルボトルを買っておけばよかったと今更後悔。

 

タバコバニラはムエットではフルに魅力が伝わらないかもしれない。

今試しに行くのは難しいけれど、

是非サンプルなどを取り寄せて肌の上で試してみて欲しい。

ゆっくり広がるタバコと甘美すぎるバニラにきっと虜になります。