香水瓶の底

細かいことは気にしない、香水ブログ

移ろいゆく香り

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こちらではきちんとお伝えしていませんでしたが、7年間過ごしたロサンゼルスを離れ日本へ帰国しました。

それがもう半年前の出来事なわけですが、今直面している問題が「ロサンゼルスと日本で全く香水の香り方が違う」ということです。

非常に乾燥しており、年中比較的温暖な地中海性気候である南カリフォルニア

自分はそこで香水をつけるということを始め、また手持ちのコレクションの殆どを現地で購入し、使用してきました。不思議なことに、持ち帰った同じ香水をこちらで使用すると物によっては全く違う香りのようにさえ思えます、それほど差が出るんです。

(香料や調香の専門知識は持ち合わせておりませんので…あくまでルポ的に読んでくださると嬉しい)

 

香りの変化について考えられる要因としては

 

・気温差

・湿度の差

・生活環境の違い

など様々ですが、まず気候によって香りの感じ方が違うというのはよくあるようですね。

(↓は香水の製造・自社販売を行っている武蔵野ワークスさんのブログ記事より。季節・気候が香りに及ぼす影響について触れられています)

 

www.fragrance.co.jp

では自分が日本で香水を使用して具体的にどんな違いを感じたかというと。

おそらく手持ちのどの香水にも共通して言えるのが

 

1. 甘い香りが立つ

今までいったい何処に居たの?!という位、とにかくバニラやハニーの甘い香りが前に出てくるように感じる。

スイートなグルマンの香りが好きなのですが、以前は日本のフォロワーさんが絶賛していたグルマン香水を自分で試してみてもあまり甘さを感じられず、また香ったとしてもほんの僅かに肌に残るのみだったので「自分の肌は甘い香りが立ちにくいタイプなんだろう」と諦めていました。

ところがどっこい、帰国してから手持ちの香水を使用すると甘い香りの思い切りよく広がること。しかも長時間続く。持続時間が伸びるというわけでなく、ラストノートの甘さが出てくるタイミングがずっと早くなる、というのに近い気がする。

これが自分が感じるもっとも顕著な変化です。

自分の鼻が急に甘い香りに敏感になったとも考えにくいですし…やはり香り方はかなり違うと思います。乾燥した地域だとバニラ系がすぐ飛んでしまうのかな?もっとも自分はグルマン・ラバー、甘いの大好きなのでこれは嬉しい誤算なわけですが。

いっぽうで、特定の香り…例えば「ホワイトフローラル+グルマン」系の香水をまったく受け付けなくなってしまいました。

もとよりホワイトフローラルに少々苦手意識があるからなのですが、自分の中でホワイトフローラルとバニラが絶妙なバランスで香っていたものが一気に甘さ+重さの大渋滞になり、気持ち悪くなってしまうことも。

 

2. ドライな香料はあまり香らない

スパイス、インセンス系のスモーキーな香り、パチョリ等の主張が弱まる気がします。いや、弱まるというと語弊がある。くぐもって香る…という感じでしょうか。ロサンゼルスにいたときはスパイス系のトップノートが突き抜けるように香り、また肌に長く留まっていた印象があります。 

勿論全てではありませんがスパイスやインセンスは少し薬品ぽい香りに転びがちな気が。わかりやすいもので言うと、渋いパチョリ+甘いチョコレートの組み合わせで有名な元祖グルマン、ミュグレーのエンジェル。

こちらはトップでマスキュリンなベルガモットと土臭いパチョリが香り、そこから段々とベリーの甘酸っぱさなんかを包み、プラリネと合わさってなんとも言えない芳しい香りになるのですが、こちらで使うと薬っぽいやけに苦いべたっとしたパチョリ(らしきもの)が一瞬香り、すぐに激甘チョコレートに変わる…といった具合です。

グルマンと同じくらい、いやそれ以上にスパイスとタバコの香りを愛している身としては、これは少々辛い…逆に、ドライなスパイシー系香水ファンの方は一度南カリフォルニア辺りに行って感想を聞かせて欲しいです、私の思い違いでなければより長くパンチのあるノートを肌の上で楽しめるはず。

 

3. 香水がより肌に近いところで香る

これは前の2つよりももっと感覚的なお話になってしまうのですが… 香りが以前より自分に近いところで香っているような気がするのです。

付け方自体は全く変わらないのに、自分で自身の香りがよりはっきりと分かるようになりました。イメージで言うと、香りのシャボン玉の中に包まれているような感覚。

そもそもLAにいた時は香水を1、2プッシュしたところで自分のつけた香水の香りを感じることはあまりなかった気がする…(変化を確かめたい時は肘の内側や手首につけて頻繁にクンクンやっていた)

車社会のため公共交通機関で人と近い距離になったり、密な空間に留まることが少なかったりと言う生活環境的要因も大きいかも、ですが、自宅にこもりきりで一人で香りを楽しんでいてもその差を強く感じるので、もしかしたら日本だと良く言えば香りが留まりやすく悪く言えばこもりやすいのかもしれません。

香水を楽しむという上で今のところかなりプラスに働いていますが、苦手かもと思った香りは一層ダメになりそうです。

 

…以上3つが今の時点で感じている大きな違いです。

こうして見ると湿度の違いがいちばん影響しているのかな?という気がしなくもない……が真相は分からず。

国内でシトラスやクリーンなムスクが好まれるのは日本人の国民性によるものだと思い込んでいたけれど、香り方もかなり影響していそうだと思いました。甘いバニラやパウダリーノートでウッとなってしまうという声が多いのもうなずける。

あくまで素人の鼻で感じ取った感想であり根拠はありませんので悪しからず…

 

実際に手持ちの香水で印象が変わったものの一例を挙げてみます。これもあくまで自分の好みによるものではありますが。

 

・日本で使うことによって好きになった香水

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Xerjoff - Golden Dallah 

以前はスモーキーなスパイスさにローズが少し酸っぱくて、パリっとした香りだな…とばかり思っていたものの、こちらだとカカオとヘーゼルナッツが包み込むようにふわふわと出てきて良い感じ

 

Initio Parfums - Side Effect 

洋酒、タバコ、バニラと最高に好みのはずの香りが、ラムが重すぎてレザー的にがっつり効き甘さが出ないとガッカリしていたのですが、これはまるで別の香水のように甘くなりました……!タバコバニラにシナモンを足してもっとバニラを強くしたような雰囲気で、そこに芳醇なラムが加わりウットリ。持っているのはサンプルなので、フルボトル購入を検討する程のお気に入りに。

 

 

・さほど印象の変わらなかった香水

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Kilian - Black Phantom

Strangers Parfumarie - Roasted coffee...
この2つはもとより死ぬほど甘い香りだったので正直日本で使ってもあまり印象が変わらなかった。どちらも変わらず好きです。

 

 

・苦手意識を持った香水

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Montale - Intense Cafe 

Atelier Cologne - Cafe Tuberosa 

どちらも記事で取り上げており、気に入っていた2つ。アントンスカフェはローズの下から出てくるバニラが、カフェチュベロッサの方はチュベローズとコーヒーの混ざり合う香りで気持ち悪くなるようになってしまいました。

勿論香りの感じ方はそれぞれですので日本で使った人が皆ウッとくる訳では無いはずですが、自分はつけ方を工夫しても改善されなかったので、悲しい……。これらより甘くても気持ち悪くならない香りもあるので、何がトリガーになるかは本当に人それぞれなんだろうなと。自分の場合フローラル系、特にホワイトフローラルが鬼門っぽい。

 

手持ちの香水、トラベルサイズやサンプル含め帰国してから全てを使ったわけではないので、何か発見次第追加していこうと思います。

この記事以前のレビューはロサンゼルスで嗅いだ香り。これ以降は日本で嗅いだ香り、となるのでこのブログもまた色々変わってくるかもしれません。

 

……こんな所です。まとまりのない長々とした文章になってしまって申し訳無いのですが読んでくださってありがとうございます。

香りが場所で変わるというのは自分にとって結構衝撃的な出来事だったので何とかして伝えたかった。

 

自分にとって香水は記憶の中にある風景や過去の中に連れて行ってくれるデバイスでもあったので、香りを嗅いでも記憶の中にあるものと必ずしも同じでないという事実は少し悲しい。

ある日パリで使った思い出の香りは、数年後違う場所で使ったらきっと同じには香らないのだ。

そもそも香水は経年変化で質も変わるし、人の嗅覚、好み、記憶だってごく曖昧で、かんたんに変わりゆくものだと思う。

香水は一期一会!今好きと思える香りがあるならば愛を持って使い倒そう。