以前ヴェルべットオーキッドの記事で少し触れたブラックオーキッド。
「いつかこれが似合う人間になるぞ!」という憧れの一本…とか何とか言ってましたがまあ買いましたね。アッサリ。去年暮れにBoxing Dayセールで30mlボトル+ボディクリームが$60だったので迷いなく手に取りました。
Tom Ford - Black Orchid
リリース:2009年
調香師:David Apel
トップ:ジャスミン、ガーデニア、イランイラン、ベルガモット、レモン、マンダリンオレンジ、ブラックカラント、ブラックトリュフ
ミドル:スパイス、フルーツノート、ロータス、オーキッド、ガーデニア、ジャスミン、イランイラン
ベース:ベチバー、サンダルウッド、パチョリ、アンバー、インセンス、バニラ、メキシカンチョコレート、ホワイトマスク
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このノート構成↑はFragranticaを参考にしています
トップはホワイトフローラルの上にベルガモット、
ブラックトリュフにアクアティックノートが乗って爽快。
濃厚なのに鼻をガツンと突き抜ける清涼感がある。
そして贅沢なブラックトリュフ。
(ただの香水ど素人の自分はブラックトリュフの香料がどんな物なのか分からないしパスタにかかっているようなトリュフの香りでさえサッパリ思い出せないのだが)トップにひとつホワイトフローラルとは違うまろやかさが突き抜けてくるのでそれがブラックトリュフなのかと。
初めてこの香水を試した時(まだ香水にハマる前だった)はこのトップを嗅いで「わ、コーラの香りがする!」と思ったのを覚えている。
甘さとスパイシーさにプラスされたシトラスでそう思ったのかな。
その後は明確な香りの変化というよりかは
フローラル、スパイス、チョコレート、インセンス、パチョリ、アンバー…
全てが複雑に絡みあってシームレスな印象。
自分の肌ではイランイラン、ジャスミンとアンバーがドミナントに香る。
兎に角これら全部ひっくるめて
「ブラックオーキッド(黒い蘭)」ノートなんだな、と思う。
イマジナリーな香りなんだろうが、
黒い蘭と聞いてイメージするのはまさにこれ。
芳しいという言葉がこんなに合う香りは他に無い。
ドライダウン後はまろやかなビターチョコレート、
ムスクと少しのインセンスっぽさが強く肌に残り
また少し違った妖しさの甘さになる。
とは言え、トップからラストまで
「この香りがする!」とピンポイントで指すことが難しい
やはり一貫して、幻の花の甘く芳しい香り。
言わずもがな拡散力、持続力共にモンスター級。
1プッシュで肌からかなり離れたところまで香るので
くれぐれもつけすぎには要注意。
多くて2プッシュ、そのうち1プッシュはウエスト〜下半身につけるが吉。
つけて1時間程は香りがとめどなく広がっていく気がするけれど
その後は肌に馴染んでそこまで強く拡散されない気がする。
また、服には翌日まで残る程のロングラスティング。
モダンかつクラシック。
Private Collectionの影に隠れてかあまり話を聞かないけれど
個人的にこの香水はトムフォードのマスターピースだと思っている。
妖しく、ダークでつかみどころのない妖艶さがある。
ユニークで主張する香水なのでけっして大衆向けではない。
が、そんなに人を選ぶようにも思わない。
香水を嗅ぎ慣れていなかった昔の自分でも
「強いな」とは思ったものの「嫌な香りだな」とは思わなかった。
この香水は季節感を感じさせない。
真夏の昼間に漂わせる香りでないことは確かだが、
どの季節にしっくりくるというものがない。
温室で手間をかけられ何年に一度としか咲かない花だから?
またこの香りはとてもダークで濃厚なのにも関わらず
どんな年齢がつけていても、
もしくはどんな性別がつけていても違和感が無い。
二十歳そこそこの男の子から60代の女性がつけていてもおかしくない気がするのだ。
ただ誰でも似合うかというとそうではない。
自身をよく知っていてかつ自信がある人こそしっくりくるのだと思う。
上手く使えば背中を押してくれるが
一瞬でも心がぐらついたならたちまち飲み込まれてしまうような、黒魔術の香り。
一方でヴェルベットオーキッドは幾分かとっつきやすい。
ブラックオーキッドの突き抜けるようなスパイシーなトップは
ヴェルベットオーキッドではコクのあるラムが取って代わり、
濃厚なイランイランやチョコレートではなく
まばゆいハニーとローズが香るミドルとなっている。
こちらのセクシーさには明らかなフェミニンを感じる。
ただヘヴィーでセンシュアルという点ではどちらも同じ。
ブラックオーキッドが禁断の黒魔術なら
ヴェルベットオーキッドは人を虜にする魔女のおまじないと言ったところか?
The Iconic Fragrance from Tom Ford | BLACK ORCHID | TOM FORD
自分がこの香りを初めて嗅いだ時はもうずいぶん前で
確かまだ18か19の時だったかと思う(ホントにとうの昔だな)
それから何度か自分の肌でも試したが
ずっと「アグレッシブ」「絶対的自信」と言った
とにかく攻撃的で他人を押しのけんばかりに主張するような印象だった。
それが今つけてみると、記憶にあるよりもだいぶセンシュアルだ。
近づき難さが以前より感じられない。
気づいたのは、これは攻撃したり挑発する香りでは無い。
かと言って誘う香りでも無い。
ただそこに在るだけで人を惹きつけてしまう香りなのだ。
媚びなくても駆け引きしなくても
自分の美しさを貫くだけで人が寄ってくる、
そんなカリスマ性をキャプチャーした香りなのだと思う。
今日は自分こそが主役だ、という日に纏うときっといい。
あなたがドアをくぐり抜けた瞬間空気がざわめく。
そんな香り。
おまけ。
「男性が女性用の香水をレビューする」という企画
最後ブラックオーキッドがボロクソに言われているのがツボです(笑)
「オレンジにケツの穴があったらこんな感じ」
「誰がこんなのつけたいの?!」
などなど。笑
美しいと思うけど大衆受けするフレンドリーな香りで無いのは確かだな。どんな香水でも付け方、香らせ方次第だと思うけどね!